高松 2003年11月1日(土)
高松市生涯学習センターまなびCAN 多目的ホール
参加者80名
講師 森岡英五先生(森岡メンタルクリニック院長)
上野玲(NPOうつコミュニティ代表/フリーライター)
11月は四国の4県を回ります。当日の高松は11月とは思えない暖かさで、パンフレットを運んだりして少し体を動かすと汗ばむほどでした。夜の開催にもかかわらず、80名という予想以上の参加者が集まってくれました。
森岡先生はスライドを使って、まずうつ病の歴史から簡単に説明を始められました。それによると、うつ病はヒポクラテスやアリストテレスなどの時代から病気としてとりあげられており、それが医学的な病気として確立したのは19世紀のクレッペリンによるものだそうです。その上で先生は、うつ病になる人の割合を引き合いに出して、男性の5人から6人、女性になると4人に一人の割合で生涯に一度はうつ病を経験するとされており、女性に割合が多いのは、出産などホルモンバランスが乱れるライフサイクルがあるからだと指摘されました。
さらにうつ病に文化人類学的な差はないが、比較的、日本人はうつ病になりやすいのではないかと言われ、その理由として勤勉で几帳面な国民性、そして都市化や近代化が影響しているかもしれないと日本人とうつ病の関係を説明してくれました。
また、うつ病と日常的な憂鬱感とは程度が違うことを強調され、うつ病は落ち込みと不安、億劫感が混じり合ってつらくなり、少なくとも2〜3ヶ月はその症状が続くが、喪失体験などきっかけがないことが多いことなど、うつ病の特徴を挙げていただきました。さらに性欲、食欲、睡眠欲など人間として基本的な欲望が低下することから、話は脳に関連するのではないかと広がり、実際、うつ病の人は前頭前野におけるブドウ糖、酸素が使われる比率が劣っていることを示して、脳とうつ病の関係をわかりやすく説明していただきました。
こうしたうつ病の基礎的な情報を踏まえた上で、先生はうつ病になりやすい年齢を「竹の節」と表現されました。厄年や30代、40代といった節目の年にうつ病になりやすいというのです。それまでは若さでなんとか乗り越えられてきた精神的なストレスも、体力が追いついていかなくなったことによって、心と体の間にギャップが生まれ、それでも無理をしようとするからうつ病が発症してしまうそうです。それゆえ、自分の気力、体力に合わせたバランスを取ることがうつ病になったとしても症状が軽く済むポイントであることを忘れないことが大切だと言われました。そのためにも常に100パーセントを目指さず、自分のマイナス面ばかりに気を取られるのではなく、むしろプラス面に目を向けること、そして物事に優先順位をつけて自分の気持ちをなるべくストレートに表現するようにして、もし心身に不調を感じたら早めに抗うつ薬などの服用を始めることが重要だと、うつ病にならない、あるいはなったとしてもつらさを軽くする方法を具体的に教えていただきました。
特に先生が強調されたのは「うつ病は怠け病ではなく、治療すべき病気であることをしっかりと認識することが大切。そしてできるだけこころの休息をとるように」と言われました。
こうしたことは頭ではわかっていてもついつい自分は怠け病なのではないだろうか、と思ってしまったり、治療を怖がったりして自分の中だけで我慢してしまううつ病患者が多いだけに、参加者にとっても直接、医師から話を聞くことで、治療の心構えや治療をしていない人へのきっかけ作りになったと思います。

上野の話は森岡先生の講演を具体的になぞるような形になりました。先生が指摘された感情はどのようなものか、どう考え方を変えていけばいいかなど、実体験に即してお話させていただきました。
質問の時間も40分まるまる使うほど内容が充実しており、知っているようでまだまだうつ病のことは理解されていないのだと実感しました。
今回は地元紙の四国新聞からも取材があり、その記事が12月には掲載される予定です。その記事を読んで、この講演会に来られなかった人も、うつ病についてもっと深く考えるようになっていただければと思います。
(アンケートから)
- 自分の体験の中で講演を聞いて思い当たることがいくつかありました。私の場合はあまり家族の理解を得られませんでしたが、友人と話すことで孤独感を癒すことができたと思います。
- 参加することに少し抵抗があったけれど、いろめいろな話を聞き、気持ちが楽になったような気がする。また、こういう機会があればお話を聞きに来たい。
- うつに関する正確かつ有意義な知識を得ることができました。
- うつの患者の接し方が少しわかりましたので、大変よかったと思います。
- 69歳になる母が2年ぶりの再発で現在、入院治療中です。通電治療に対する見解をお聞きしたくて来ましたが、悪いイメージが少しやわらぎました。上野さんのお話、とても参考になりました。明日、面会に行った時、「大丈夫だよ」と手をとり、スキンシップを心がけたいと思います。
- 森岡先生の話は本を読むよりよく理解できました。(上野の)ジャマイカ精神の話は面白かったです。
- お話の中にあてはまるものが多くあり、少し気持ちにゆとりを持つようにします。
- 素晴らしいケアの仕方がわかったように思います。やはりいろいろと(患者の訴えを)聞いてあげること、極端なはげましでなく、その人と同じ気持ちになることの大切さを感じました。
- うつ病の講演会に出席して良かったと思います。うつ病の接し方は本を読んだり、人から聞いたりしてわかっていたような気がしていましたが、本当に(今回の講演で)理解できるようになりました。大丈夫と声をかけることや手を握ってあげるなどは実践していこうと思います。
- 「頑張れ」という言葉はうつの人にとっては禁句とはわかっていても、つい言ってしまう自分。仕事とか会社の人間関係が上手にできなくて、うつになった息子に「自分に自信を持て」とか「あなたの思い過ごし」とか言ってしまう私。気晴らしと思って家の外に出そうとしているのが本人にとって悪いこと・・・など。上野さんの話を聞いて「つかず離れず」の言葉を頭において息子と接していこうと思いました。
- 周囲の人としての接し方も参考になった。スキンシップや大丈夫などの言葉、気分転換に旅行に誘ってはかえって気をつかわせることになっていけないなど、他からも聞いたことがあり、なんとなく知っていたが、今日の話でよくわかり、やっぱりそうかとはっきりした。
- 三男がうつ病らしく、それがまったく信じられなくて病気とは思えなかったことが本人の症状を悪くしてしまったようです。もっとよく理解してやればと悔やんでいます。お話を聞き、少しわかったのではないかと思います。これからは少しですが、わかったことをもとに息子を見守ってやりたいと思います。
- (うつでつらいのは)自分だけかと思っていましたが、会場に来たらたくさんの人がおられるのに気づかされました。今日まで大勢の集まりには参加できなかったのに、今日は味わったことのない安心感に包まれ、不思議な心地よさに驚いています。高松でも患者会を是非、持ちたいです。
- 「なんとか生き延びている」・・・うつの時は本当にそんな感じだなぁとしみじみ思いました。今日、こうやって来られたのは、うつが比較的良くなっていた時期だったからですが、ちょうどそんな時にこの講演会があってよかったなぁと思っています。100パーセント良くなることは最初から期待していませんが、でも、これからの見通しが多少でも見えてきたような気がするので、今日は来て良かったです。本当にありがとうございました。
- 自分もうつ病かなと思いながら生活しています。今日の話を聞いてもっと自分の気持ちを言葉で伝えていき、頑張り過ぎないようにしたいと思います。少し気持ちが楽になりました。
- 新聞で今日の講演のことを知り、兄弟が時々、うつ病を発症するので、参考になればと思い、拝聴しました。すごく参考になりました。どう患者に声をかけたらいいのか迷っていたので、今後は今日の話をもとに実践していきたいと思います。周囲には同じ悩みを持つ人々も大勢いることを知り、これからもこのような機会があれば、どんどん参加して、意見を聞きたいと思います。
- 知人に数名のうつ患者がいます。今日のお話で少し対応がわかったような気がします。
- 子供の接し方がよくわかりました。ありがとうございました。
- 不安であったことが理解できました。
- こういう会を作っていることがすごいと思う。家族の会、あったらいいと思います。家族だってしんどいんです。でもしんどい気持ちのやり場がなくてこっちが参ってしまう。これからもこうした活動を頑張ってください。
- 体験談は具体的でわかりやすかったです。私も引きこもりの家族会の活動をしていますが、共通項が多く、大変参考になりました。
- 今年の4月に仮面うつ病になり、8月近くまで薬の服用をしていましたが、今は飲んでいません。私の場合は会社をリストラされ、そこで妻の助けをかりながらどうにかこうにかやっています。この10月からは就職活動を始めますが、なかなか思うようにいくかどうか不安ですが、ボチボチいきたいと考えています。今日は非常に良い講演でしたので、参考になることもあり、今後に活かしていきたいと思います。
- うつ病って重い病気だと思いました。本人しか理解できない問題だし、ガンやその他の身体的疾患みたいに他者にも肉眼的に理解してもらえるものとは違うと思いました。 (上野の講演で話した)ジャマイカ人・・・おおいに賛成です。常にゆとりのある生活を送りたいと思います。身近に感じられる講演会でした。
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