■うつコム講演会記録

仙台 2003年8月9日(土)

若林区文化センター 展示ホール
参加者50名
講師 粟田主一先生(東北大学大学院医学系研究科精神神経学助教授)
   上野玲(うつコミュニティ代表)

 講演会当日は、あいにく大型の台風10号が近畿地方を縦断しており、仙台もその影響で風や雨が強い最悪の状況となりました。それでも50名の参加者を得られたことは大変ありがたかったと思います。
 粟田先生からは、診察時にうつ病を判定する上でポイントとなる12項目の解説がありました。その中でも特に気持ちの落ち込み、何事にも興味がわかない、疲れやすいことがうつ病判定には大きな基準になることを指摘していただきました。12項目のうち、9項目以上にあてはまる場合は、単なる気持ちの落ち込みではなく、「病気」として考えなければいけないというお話は、非常にわかりやすく、うつ病を軽んじてはいけないことをあらためて感じました。
 また、高齢者のうつ病についてお話になり、配偶者の死など喪失体験に加えて、住み慣れた家を離れて息子夫婦と暮らすようになった老婦人が環境の変化と自分の役割を喪失したことでうつ病になってしまったケースなど、具体的な事例をもとにしたお話は説得力があり、参加者にも高齢者が多かったことから、大変、参考になったと思います。さらに中年期のうつ病に多いケースとして、一生懸命仕事に打ち込んだ末になりやすい消耗性うつ病など、臨床に長く携わっていらっしゃり、難しい症例を診る機会も多い大学病院の先生ならではの親話が続き、内容的にはとても充実していたと感謝しています。粟田主一先生
 特に印象的だったのは、抗うつ薬を飲めばうつ病は治るとされているが、経験的に患者の2〜3割は抗うつ薬を飲んでも治らないケースがあるというお話でした。こうしたことを医師がお話になることはなかなか勇気がいることだと思いますが、安易にうつ病は治ると流してしまうよりは、率直に難しい病気の一面もあることをお話いただいたほうが、長期間、治療を続けている人にとっては有意義だったと思います。
 後半は上野の講演、そして質問コーナーと続きました。質問ではパラニック障害について薬は何を飲めばいいかといったものや遠方に暮らしている子供がうつ病になったらしいが、親元に呼び寄せたほうがいいか、あるいは女優を目指して東京で暮らしている長女がうつ病と診断されたが、休学することは必要かなど、様々な問いかけが相次ぎ、時間が足りなくなるほどでした。講演終了後も先生に相談される方がいらっしゃるなど、参加された方々のうつ病に対する熱心な姿勢を伺えました。
 今回の講演会で気になったことは、うつ病に関して公的な機関での相談窓口がなかなかない、あるいはどこへ相談したらいいかわからないといった情報不足です。折しも講演会の数日前に厚生労働省の調査結果で、うつ病対策の必要性が高いことがわかっただけに、おざなりな行政の対応には問題があると思います。行政がもっと情報提供や相談窓口を拡充するなどの対応に本腰をいれて取り組まない限り、年間3万人を越える自殺者(その大半がうつ病関連だと言われています)の問題は解決できないのではないかと思います。うつコミュニティの活動は微力ですが、少しでも各地のうつ病に悩む患者さん、家族の方々の手助けができればと講演会を行う意義を痛切に感じました。

(アンケートから)
  • さすが(うつ病)経験者だと思う話だった。
  • うつ病についての知識がない人に理解してもらいたくて、一緒に来場しただけに(粟田先生が)初心者向けの話から始めてくださったのは大変良かった。
  • 私がうつで苦しんでいた時、夫が「大丈夫」と言ってくれたことを思い出しました。つらさをわかってくれる人が世の中にいるだけで、この先の不安が少し和らぐ気がしました。
  • (質問時間に)相談ができて、気分が楽になりました。諦めずに自分に合うドクターを探してみようと思います。
  • (今度は)青年期のうつ病について話を聞きたい。
  • (患者)本人の症状と(上野の)話が同じで、家族としての対応がよくわかりました。
  • (医師と患者がうつ病を治すために)治療同盟を結ぶという話は説得力があった。患者が医師を信頼できることが治療の出発点ですから、患者の立場にたって考えていらっしゃる(粟田先生の)姿勢に共感できました。
  • ご自分も大変な中でこのような活動をされていることは素晴らしいと思います。
  • (患者)本人の経験を正直に話して下って感謝します。
  • 老齢期の母親の症状に(粟田先生の)お話がぴったりで、今後に役立ちそうだ。
  • 患者の心の痛みを本音で聞けて参考になった。(これからは患者に)感情移入できるかもしれない。
  • (講演会に)出席させたい人が何人もいる。もっとPRをしたほうが良いと思う。
  • 今まで知らずにいた消耗性うつ病について納得のいくお話を聞くことが出来て良かった。
  • 家族としていろいろ相談された時、病気だからしょうがないと言っていましたが、「大丈夫」という言葉がどんな時に使えば良いかを感じさせられました。
  • うつに関するカウンセリング等、最近、新聞などでは東京の話をよく目にしますが、仙台でもそのようなシステムをもっと作って欲しいと願います。また、そうした相談機関を市民がわかるように知らせて欲しいです。
  • 具体的でひとつひとつうなづける話が多く、希望が持てた。
  • 家族がうつ病なので講演会に来ましたが、こんなにたくさん、悩んでいる人がいることに驚いた。
  • うつ患者同士の集まりが仙台にあればご紹介ください。
  • (粟田先生の)雰囲気も良く、お話も丁寧でわかりやすかった。こんな先生に診ていただいたら、早く治りそうです。
  • 6年間のうつ体験者の話は説得力があり、ヒントをいただきました。
  • 入院まで経験されたうつ病体験者のお話は実感がこもっていて説得力がありました。「大丈夫」「スキンシップ」「キーパーソンを作る」など、参考になりました。
  • 実例をあげて話してくださったので、すごくわかりやすかった。
  • まだ現役のうつ病の方の話はすごい勇気というか、説得力があった。(つらい時は)手を握ってあげると良いという事は気に入りました。人の手のぬくもりはうつじゃなくても癒されるものですね。
  • 先生のお話でうつ病は立派な病気だという認識がちょっと薄いのが問題だと思った。まだまだ社会的に偏見があることを実感した。
  • (つらい時は)手を握ってあげる、方を抱いてあげる、背中をさすってあげることは人間にとって心地よいことだなぁと感じた。
  • 治りにくいうつ病があることがわかった良かったと思います。
  • 真剣にうつという病気にを再確認したいと思います。どこかに病気ではなく、「怠け者」のせいだと思っていましたから。
  • 初めてうつについて聞きましたが、とてもわかりやすく、これからの参考になりました。
  • 約2年間、週1のペースで通院していますが、全然良くなりません。(今日は)いい話を聞けたと思います。
  • 難治性の方が2〜3割もいらっしゃるとは知りませんでした。よく「治る」ということばかりが強調されて、長く治療されている方の問題が置き去りになっていると考えていたので、この問題に取り組まれている先生がいらっしゃることをとても心強く思いました。
  • 患者の立場にたったリアルなアドバイス、実践的な内容ですごくうなづけることが多かったです。
  • こういう場がもっとあればいいと思います。もっと規模は小さくてもいいですから、機会を増やしていけば、現場で悩んでいる人の力になるのではないかと思いました。
  • このような講演会がもっと増えるといいですね。

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