松江 2003年10月5日(日)
松江市生涯学習センター 交流ホール
参加者55名
講師 佐々木尊光先生(日本ホリスティッククリニック佐々木医院院長)
上野玲(うつコミュニティ代表)
10月は中国地方を回ります。その最初の地が山陰の松江です。あいにく会場の都合で開始時間が午後6時半と遅くなってしまい、参加者の数が危ぶまれましたが、地元紙に記事が掲載されたこともあって、遅い時間の割には人が集まってくれました。
講師の佐々木先生は中国地方で最初に心療内科を標榜した非常に先駆的なお医者さんで、薬物療法だけではなく、ヨガや気孔、食事療法など多角的に治療を進めるホリスティック(全人医療)を行っています。それだけに今回の講演会は内容的にも面白い企画になりました。
まず、佐々木先生は参加者にリラックス法を伝授。ともすれば講演会というと堅苦しい思いが強いものですが、会場の雰囲気を解きほぐしてから、うつ病全般の説明をされました。その中で佐々木先生の口から出たのが、「うつ病は本当にこころの風邪なのでしょうか?」という言葉です。確かに「こころの風邪」というキャッチフレーズでうつと病は言葉として市民権を得ましたが、まだまだうつ病の正しい理解をしていない人が多いのが現状です。そこで佐々木先生は「うつ病は誰しもがかかりやすい病気という点では風邪かもしれないが、風邪のようには簡単に治らない。むしろしつこい風邪で命を落とすこともあることは忘れてはいけない」とうつ病治療には時間がかかることを指摘されました。また、うつ病が適切に治療されていない問題点として、「内科で不調を訴えている人の2割はうつ病の可能性がある。その中で医師がうつ病を発見できるのはわずが1割程度。だからなかなか治りづらい。抗うつ薬の服用と適切な治療を受ければ必ずよくなる病気だという認識を持つことが必要」と強調されました。
そして治療法としては、抗うつ薬の効果を説明。また、休息の重要性をこのように解説されました。「休むという文字は、人が木に寄りかかっている。つまり、休息とは誰かを木に見立てて寄りかかっていいのです。そのためにも家族など周囲の人の協力と理解が不可欠」。なかなか医師から休息の必要性を説かれても、具体的にどうしたらいいか戸惑ううつ病患者が多い中で、こうした説明は説得力があると思います。
このように薬物療法、休息がうつ病治療の基本であるが、それでも治りが遅い場合は、認知療法などの心理療法や電気痙攣療法、光照射療法などもあることが紹介され、うつ病の治療のアウトラインがよく理解できました。
しかし、最終的には自然治癒力を高めることが大切であり、「病は神が治して医者は金をもらう」といったいかにも出雲大社のある島根のお医者さんらしいコメントも飛び出して、東京から来た私たちにとってはとても興味深い内容でした。
さらに、先生の話は全人医療にまで及び、実際、先生の病院で実践して効果をあげている、食事療法についての解説がありました。それによると、基本食を玄米にすること、そしてその玄米をよく噛むこと、肉類、甘いものはなるべく避けて、魚、野菜を多く摂ることなどによって、うつ病体質の改善ができるそうです。その他、呼吸法や気孔、あるいは民間療法として行われている背中に蒟蒻を張る方法など、東洋医学も採り入れた治療法があることを紹介され、うつ病治療の裾野が広いことを知ったのは、参加者にとっても有意義だったと思います。
最後に参加者4名に協力してもらい、左手に自分の不調を治す漢方薬を載せて、右手の親指と人差し指で輪を作ってみると、どんなに力を入れても輪が解けないのに対して、体に害がある煙草を左手に載せると簡単に輪が解けてしまう、といったパフォーマンスもしていただき、大いに参加者の関心を呼んでいました。
このように今回の佐々木先生の講演はあらゆる意味で、これまでの講演会とはひと味違うユニークな内容で、シャイな気質とされる松江の人々にも楽しい時間が過ごせたと思います。

続いて上野の講演を行いました。たまたまこの講演会の前日に、末っ子の運動会があったので、この子の話をしました。ちょっどこの子が生まれた5年前は上野のうつ病が最悪期を迎えていた時期だったのですが、この子が生まれたことで生きることに希望が持てたという内容の話をさせていただきました。
質問の時間は他の講演会に比べて質問数が少なく、あたかも佐々木先生と上野のトークショーのような進行になってしまいました。しかし、こうしてざっくばらんに患者と同じ視線で話をしていただける医師はなかなかいないので、医師と患者は二人三脚で病気を治していくものであるという医療の本来あるべき姿を、期せずして目の当たりにできて、参加者にも医療に対する考え方を変えるきっかけになったと思います。今回は時間や会場などの関係で参加できなかった方も多かったと思いますが、今後、うつコムの活動を続けていく上で、また松江や島根県内で講演会を行って、より多くの参加者に今回のような楽しい講演会を体験していただきたいと思いました。
(アンケートから)
- (佐々木先生の講演にあった)甘いもの、インスタントものは食べず、玄米をよく噛んで食べるというの説明にはなるほどと感じ入りました。
- (患者でもある上野が)演壇に立ってお話をしてくださり、感謝しています。
- 実体験に基づいた話はよく理解できた。
- うつ病のつらさが痛いほどわかりました。私の息子もうつ病でかなり重症のようでしたが、治療の成果が出て、だいぶん良くなってきたことは嬉しい限りです。
- わかりやすいお話で、楽しい講演を聞くことができた。
- 体験に基づいた話が自分の症状と重なる部分も多く、興味深く聞けた。
- (佐々木先生の話を聞いて)前向きな気持ちになれました。
- うつ病とは人生のピットインである、というのは本当だなぁ〜とつくづく思いました。
- 家族がうつになって、この半年間、他の家族も精神的苦痛を味わい、心身共に休まらなくなった時期があったけれど、今は少しでも(うつ病のことを)理解して、自分のできる範囲で助けてあげたいと思っています。この講演を聞いて、よりうつ病に対する理解が深まりました。
- (佐々木先生の)自分の治療法に自信があるという言葉を聞いて、少し安心しました。
- 自分もうつ状態になった経験があります。まわりの人誰もがうつ病の可能性があることを知ったのは意味がありました。もっとも、今、思い出しても戻りたくない時期ではありますが。
- 2年前まで広告デザインの仕事をしていたため、(上野の話を聞いて)業界の不規則な時間やプレッシャーなどに共感できました。
- 自分と同じ経験をした人の話に共感しました。
- (佐々木先生の講演は)ユニークな話でわかりやすかったです。別の機会にも講演をしていただきたいと思います。
- 子供がうつにかかって治療をしているのですが、上野さんのホームページは知っていたと言っています。これからの支えになればいいなと思っています。
- うつ病の治療をしている本人がこの講演会に足を運んでくれてとても嬉しかったです。
- ありがとうございました。家族としてどう接していけばいいか、理解が深まったような気がします。
- 竹脇無我さんの本を読んで、今日は参加しました。上野さんの話は説得力がある内容でした。
- いいお話が聞けて感謝しています。
- 苦しい体験をされた話を聞いて、うつ病について少し理解できた。
- (佐々木先生の講演は)とてもわかりやすくお話いただきましたが、もう30分くらい時間があれば良かったなと思います。
- 私たちのために本当に良いお話をしていただき感謝でいっぱいです。勇気をたくさんいただきました。私も毎日、死を考えています。追いつめられて、今は入院をして少し楽になりましたが、家族の愛が一番の薬ですね。
- 家族の理解が得られなかったのが、皆のこころがひとつになり、私のためにのこの講演会に参加してくれたことだけでも嬉しかったです。自分に合った方法を見つけていこうと思います。こういう機会を与えていただき感謝しています。
- (うつ病治療は)時間がかかって当然と割り切っていこうと思いました。焦るのはやめます。うつ病になったことを人生の転機として、ピンチをチャンスに変えていきます。
- 今日は良い話が聞けたと思います。うつについてなかなか話を聞けることがなかったので、以前、自分もうつ状態になった時期があったので、つらいのは自分だけじゃないんだとちょっと安心しました。
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